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楽しい精神病は存在しない

北杜夫(本名、斎藤宗吉)は精神科医でありながら芥川賞作家でもある。どくとるマンボウ昆虫記 (新潮文庫)などで作家としても非常に名高くファンが多い。

そして、躁うつ病者としても知られる。

パパは楽しい躁うつ病パパは楽しい躁うつ病
(2009/01/09)
北 杜夫、斎藤 由香 他

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本書はエッセイストで北杜夫の実娘、斉藤由香によるもの。

北杜夫は1927年、歌人でもあり東京港区にある精神病院の院長を務める父と、その大病院のお嬢様の母の元に次男として生まれる。ちなみに兄も精神科医である。

北杜夫の少年時代は昆虫採集に熱中し将来は文学者でも医者でもなく昆虫学者になりたいと思っていたという。父の歌に出てくる虫の知識の間違いを指摘することもあった。しかし、鬼のように怖くて頑固な父に「昆虫学者では生活できない。生物学者の二、三人の月給を調べてもらったが、お前には医学者になってもらいたい」と言われ東北大学医学部に進学する。

その後、精神科医として活躍しながら、1960年「どくとるマンボウ航海記」がベストセラーになり、同年「夜と霧の隅で」にて芥川賞を受賞。
そして、結婚も果たし子供を授かり、絵に描いたような順風満帆な人生に見えたが、躁うつ病になったのは長女が小学校1年生の時だったという。

長女が朝起きてくると新聞にマジックで「喜美子のバカ、喜美子が先に寝やがるから、俺様は蚊に食われたじゃないか!」とバカという言葉を今まで使わなかった北杜夫の妻を罵る置き書きが食卓の上に置かれていた。その後、朝五時に起きるようになり「映画をつくりたい。映画をつくるためには相当な資金が要るから、今日から株の売買をします」と言い始めて、証券会社と株をやるようになった。
夏は躁病、冬はうつ病と自分が大好きな昆虫のような生活スタイルになり、俺様は勉強意欲が湧いた!とNHK「中国語講座」を大音響で聴いたり、一睡もしないで音楽、映画、漫画など手当り次第になんにでも手をだした。やがて株で破産に至る。「俺様が稼いだ金を好きに使ってなにが悪い!喜美子は作家の妻として失格だ!実家に帰れ!」と妻子は家を追い出され、長女は電車通学となった。その代わりに当時大学生でその後、出版社に入る男性を長女の部屋に書生として住まわせた。
その後、ムツゴロウ王国に触発され、妻子に「パパは日本国から独立するから!」と宣言。自宅を、「マンボウ・リューベック・セタガヤ・マブゼ共和国」とした。北杜夫が主席、妻が大蔵大臣、長女が平和大臣。文華の日を定め、その第二回には遠藤周作が選ばれ、テレビや週刊誌が取材にきたという。

一般的に医者という職業は、勉強ができれば誰でもなれる。つまり、生まれながらの才能とは関係なく勉強して理系偏差値エリートになり富と名誉が手に入る。このような立場になっておいしい思いをしてしまうと、特に自分の息子には医者以外の職業を問答無用で認めないことも多々あり、否応でも医者の息子は医者を目指すことになりやすい。そのため日本の進学校には泣く泣く勉強している医者の子息が必ずと言っていいほど存在する。時に医者の息子が事件を起こすのもこのためだ。また、医者の不祥事がなくならない理由や日本の医療現場の疲弊と行き詰まりも無関係ではあるまい。

北杜夫もその例外ではなく、その犠牲者となり、持って生まれた特性が歪み、躁うつ病になったと考えるのが妥当だろう。富と名誉の中毒になった精神科医の父の命令により、興味のあることを犠牲にし興味のない勉強を人生の基盤にしなくてはいけなかったのだから、おかしくならない方がおかしい。統合失調症も躁うつ病も永久に解明されないような気もするが、患者の半生を振り返り改善する勇気があれば別になんでもない簡単な問題であることがほとんどではないだろうか。

それにしても、北杜夫自身、「精神分裂病における微細精神運動の一考察」で医学博士となっていることに悲哀が感じられてしまう。そんなあえて難しく加工したものより、もっと単純で大切なことが身近にあるはずだ。大体、医学というのは生物学を基礎とするのだから北杜夫の天性の昆虫への好奇心の方を優先しないようではおかしい。何かと基礎研究とそれを追い求める者を軽視し、ちょっと理数系の勉強ができるとそれを無視してまで医学部進学を勧めるようなことが蔓延する国は滅びてしまうだろう。これは日本が早急に改善すべきことの一つだ。

北杜夫は編集者の方々に「先生」と呼ばれるのが好きではなく、「北さんと呼んでください」と頼んでいる。また、数々の賞を受賞しているが「誰かに評価されたい」と名誉欲がある人間ではない。

いつまでも子供のままで昆虫を追及するだけの純粋な学者として生きるべきだったのではないだろうか。
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.07 2011    北杜夫・精神科医 comment0 trackback0
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藤家孟志(ふじいえたけし)

Author:藤家孟志(ふじいえたけし)
アスペルガー問題を研究している一般の男です。

この研究を基に、アスペルガーの世界に迷い込んでしまった人を一人でも多く普通の世界に連れ戻すことができたら幸いです。

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