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個性主義社会

日本は戦後の焼け野原から奇跡的な復興を成し遂げた。平和で安全でなんでも気軽に手に入るディズニーランドのような国を築くことに成功した。

しかし、2012年現在、日本は機能しないまでには至ってはいないものの、閉塞感と将来に対する不安はよほどの者でないかぎり感じずにはいられない国になった。築き上げた蓄財は日に日に減っており、日本の借金は約1000兆円に積み重なり、毎年約50兆円ずつ増えている。今後も収入は増える要素がなく支出は減る要素がないので、いずれⅩデーが来るのは時間の問題だ。1400兆円もの国民資産が存在するが、2020年頃には純粋な赤字国に転落する計算で、日本人自身でこれを改善することはできないだろう。この頃には毎年60兆円ほどの借金が必要になるはずだから、おそらく外圧により、生活水準の大幅な引き下げを強制されることになるだろう。これだけの生活水準を誇る日本だが、先進国としては初めての破綻国家として世界に注視されることになるわけだ・・・

どうしてこうなってしまったのか? 多くの識者は、円高、デフレ、新興国の台頭、少子高齢化、自民党、民主党、など色々ともっともらしい単語を用いて説明してくれるが、これらの大半が、日本人があって、ここから生じるものなので日本人の根本的なあり方に踏み込まないと何も解決しない。つまり、自分達自身の問題を棚上げし、他のことに責任転嫁しているのが現代日本の実像ということだ。

リヴァイアサン〈1〉 (岩波文庫)リヴァイアサン〈1〉 (岩波文庫)
(1992/02)
T. ホッブズ

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十七世紀のイギリス人で哲学者のホッブスは、主著「リヴァイアサン」において、専制君主制(特定の人物、集団に政治権力が集中し、それを批判する勢力や憲法、議会制度なども存在しない政治形態。)を正当化するため、個人の権利を主張し合うだけでは社会の秩序は維持できず、社会を丸く収めるためのシステムが国家であると説いた。

リヴァイアサン(以下リバイアサン)は、日本の人気RPGゲームのFFシリーズに登場することからも姿形はイメージできる人が多いと思われるが、元々は旧約聖書に現れる巨大な水棲怪獣のこと。そして、ここからが重要なのだが、ホッブスは個人の安定のためみんなで力を合わせ絶対服従するための対象としての国家をリバイアサンに例えたと言える。

しかし、人権が確立していない時代だったということもあり、彼はこの怪獣が自分の権益や保身のために暴れることに関しては一切触れていない。簡単に言えば、日本低迷の根本的要因は、歴史上唯一成功した専制君主制、社会主義とも言えるほどの国である日本のリバイアサンが暴走し制御不能になってしまったということに尽きる。ここでいう暴走とは、先天的な才能を開花させた者たちのものではない無理やり作られた成功体験ゆえのしがらみであり、個性排除による経済成長の代償ということだ。

知価革命―工業社会が終わる 知価社会が始まる (PHP文庫)知価革命―工業社会が終わる 知価社会が始まる (PHP文庫)
(1990/06/15)
堺屋 太一

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著者は堺屋太一。今をときめく、「大阪維新の会」の陰の立役者である日本のキーパーソンの一人。ちなみに、私がアスペルガー問題研究でもっとも影響を受けた人物でもある。本書は工業化時代の経済成長大前提の時代が終焉し、次なる時代を知価社会と命名し啓蒙してくれる。

リバイアサンの暴走は日本人が時代の変化に対応できていないと言うこともできる。時代の変化により、リバイアサンに服従したところで安定した生活は手には入らない。むしろ、そうすることで不幸になることに気づいていない。

これまでの世の中、特に戦後日本はある意味ラクな時代だった。食糧でさえ満足に存在せず、三種の神器と言われたテレビ、冷蔵庫、洗濯機が貴重な時代において、だからこそ、あれが欲しいこれが欲しいと需要が生み出され経済成長に専念しそれを謳歌することができたからだ。しかも、軍事的にも米国に守ってもらえるという恵まれた環境の中で。

このような社会は工業化社会などと言われるが、とにかく、大多数の人は何も考えずに会社に入って何も考えずにがむしゃらに働いていれば年齢に応じて給料が上がり人生は安泰だった。そして、社会の矛盾を悟っても、当たり前の経済成長で手にした金を握り締め、居酒屋あたりでそれを自分の実力と偽り、それをまかり通すことができた。

教育もラクだった。誰とでも取り替え可能な、自分の意見を持たず言わずの従順な会社人間を育成するために没個性教育さえ淡々とこなしていればよかったからだ。毎朝、時間きっかりと集合し、大して授業、勉強を理解せずとも暗記して点を取れれば優等生になれた。
当時も変わり者もたくさん存在したが、多くの者は経済成長に夢中になっていたために、アスペルガーなどという言葉を使う必要はほとんどなかった。

これは世界で欧米以外に唯一経済成長した国として歴史に残る快挙ではあったが、世界で唯一成功した社会主義国としても歴史に残ることとなった。

しかし、このような時代は永久には続かない。なぜなら、人間の欲しいものにも限界があるからだ。テレビがなければ白黒テレビが欲しくなり、次はカラーテレビが欲しくなる。でも、普通のカラーテレビがあれば、デジタルテレビや3Dテレビはどうしても欲しいというわけでもない代物だ。

つまり、モノが必要以上に溢れ、それを簡単に手に入れる時代を築くことに成功した今、かつての経済成長モデルはありとあらゆる場面で通用しないものとなっている。それどころか、この思考停止による成功体験が足かせとなり、新しい時代に向けた変革を邪魔をしているのが現状だ。

現代日本の本当の負債は、1000兆円の借金ではなく、完全に時代遅れの個性排除を信条とする教育を受けてしまった大多数の日本国民そのものと言える。

会社はだれのものか会社はだれのものか
(2005/06/25)
岩井 克人

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著者は元東京大学経済学部長の岩井克人。言わずと知れた論客の一人で、自ら一度も会社で働いたことのない象牙の塔に籠りきりの人間と言う岩井氏のこだわりは「会社は法人であり、モノでありながらヒトである。」というもの。そして、その研究を基盤としてポスト産業主義社会の到来を主張している。

そして、これが知価社会と同義であるとし、ここでは、おカネの価値が下がりヒトの価値が上がるということにあると主張する。また、常に新しい技術、製品、市場、経営手法を追求し差別化を図り続けなければならない社会であり、利益の源泉はこれらに対応できる知識、能力を持つヒトにあると説く。

ここでいうヒトとはどういう種族なのかと言えば、精神医学用語のアスペルガーに該当するヒトに他ならないのではないか。

アスペルガーは個性を完全に否定する言葉であり、その当事者も完全に否定したものだ。しかも、個性を肯定することが、利益につながる時代に生きているというのに、全国レベルで個性を否定しそれをアスペルガーという障害として扱っているのだから救えない。これが日本の現実であり、日本人の実力なのである。そもそも、それ自体が罪であり、だからこそ合法覚醒剤へと結びつくわけだが、このような時代に逆行する行為をいつまでも続けていれば、今後、避けられないであろう生活水準の大幅な引き下げを長期化し、二度と復活できなくなってしまいかねない。

日本人一人一人が、個性主義社会の到来を受け入れ、個性を伸ばすことをまず第一に考えるような人間へと180度変わっていかなければ、大幅な生活水準の引き下げと絶望と不満の中で強制的に生き続けなければならない。

そうならないためには、アスペルガー診断の段階的な廃止が絶対条件であることは言うまでもない。まずは、学校でのトラブルを介さないアスペルガー診断と投薬は禁止すべきだろう。

いずれにせよ、日本という国の経済成長は個性をその代償として犠牲にしたものだ。覚せい剤を使用した者が、その快楽の代償に苦しみ続けるように、日本人はその代償に、苦しめ続けられることになるのが厳しい現実なのだ。

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なお、知価社会、ポスト産業主義社会に代表される、工業化社会以後の世界は、経済分野の論客であれば当たり前のことすぎて、その呼び名が定められて共有されているわけではない。しかし、それに特化したものも少なくないので他のものを羅列しておきたい。

増田祐司 高度情報化社会、フリッツ・マッハルプ 知識社会、ダニエル・ベル 脱工業化社会、アルビン・トフラー 第三の波、夏野剛 複雑系社会

大転換―脱成長社会へ大転換―脱成長社会へ
(2009/03/26)
佐伯 啓思

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また、佐伯啓思の脱成長社会のように経済成長自体を疑問視する主張も少なくない。おそらく、精神医学用語のアスペルガーに該当しない人は経済成長の場で活躍しようがないので、この道を選択せざるをえなくなるだろう。しかし、注意してほしいのはこっちの道もあれこれと細かいところまで考えなくてはならないことが多くなり、非常に複雑な社会を生きることには変わりないということだ。つまり、どっちにしろ、アスペルガーに該当しない人は、アスペルガー人間による先天的な個性に頼らずに幸せになることはできないのである。
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.11 2012  個性主義社会 comment0 trackback0
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プロフィール

藤家孟志(ふじいえたけし)

Author:藤家孟志(ふじいえたけし)
アスペルガー問題を研究している一般の男です。

この研究を基に、アスペルガーの世界に迷い込んでしまった人を一人でも多く普通の世界に連れ戻すことができたら幸いです。

何かありましたら  fuzietake@gmail.com  までよろしくです。

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