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不登校少女への父からの英才教育

高校の勉強を親が自分で子供に教えろとはさすがに言わないが、小中学生の勉強ぐらいそうすればいいのにとは子供の頃から感じていた。しかし、この提案に対して、親からは「そんなことができるのは教養のある一部の親だけだ」と反発され、教師からは「しつけは家庭で勉強は学校でが基本です」と言われてしまう。

それでも、小学生の勉強ぐらいなら何か事情がある家庭以外ならやはりなんとかなると考えるのが妥当だろう。にもかかわらず、小学生の段階で不登校というと日本では大問題として扱われる。日本という国では小学校に通うということは勉強とは別次元の意義が隠されているようだ。

やはり義務教育には勉強以外に日本国家への忠誠心のようなものを植え付ける意図が存在するとしか考えられない。日本人として生きるには子供の時から徹底した日本的教育を受けなければやっていけないことをぼんやりとでも感じてしまうのが普通の日本人だ。先天的か後天的かは分からないが、結局のところ日本人は国と役人を中心とした「お上」が大好きなのであり、実質的にも、この国はお上意識により統制された社会主義国と言える。

さて、小説で最も知名度の高い賞はなんといっても芥川賞だが、「蛇にピアス」という作品で、若干二十歳でこの賞を受賞した元不登校児の金原ひとみという女性がいる。

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金原 ひとみ

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アスペルガー問題を研究する者として、たくさんの小説家の中から彼女を特別取り上げるのは、彼女が不登校児であり、かつそれを否定しない父親の英才教育がきっかけで小説家になったことと、否定した母親への鬱憤が小説に表れていると考えるからだ。

彼女は小学四年生のときには完璧に不登校となったが、その理由がすごい。

なんだかあらゆることが面倒臭くなってしまったんです。授業をうけなきゃいけないこととか、先生の言うことを聞かなきゃいけないというのが。

ここまで言ってくれると清々しいものがあるが、小学6年生のときに父親の仕事の関係で米国に渡っていて「外国の人は、日本とは違って考え方が自由な感じがして」と答えている。そして、その頃、父親が日本の小説をどっさり買ってきて「置いておくから興味のある本があったら読んでみたら」と言われ、これが小説を書くきっかけになったという。また、「もし強制的に読めと言ったら読まなかったと思う」と答えている。

このあたりは英才教育のお手本となるものなので参考にしてほしい。強制的に鞭を打って教え込むのが英才教育だと思っている人が多いのだが、内部に眠る才能を自然な形で引き出すのが本当の英才教育なのである。そもそも読めと言わなければ読まないようならその子供に才能があるとは言えない。

中学生になるとまた日本に帰ることになるが、彼女は中学も行かなかった。その理由がまたも清々しい。

「ジャンパースカートに丸襟のすごくかわいくない制服で、こんなの着るんだったら死んだ方がまし」

当時は昼間は家にいてその後は高校生の彼氏と歌舞伎町などの繁華街で遊んでいたというが、父親から大学の創作ゼミに来てみないかと誘われてそれに参加することになる。彼女の父親は金原端人という翻訳家兼大学教授だ。

また、彼氏に暴力を振るわれたりして疲れていたというが小説に書くことに気持ちを埋めたかったのかもしれないと答えているが、高校に入ると別の彼氏の影響で今度はパチスロにはまり、お金がなくなると二、三日間は水とコーヒーだけですごす日もあったという。ファミレスでバイトもしたがやはり面倒くさいと二、三ヵ月でやめている。

しかし、このような荒んだ生活の中でも書く行為だけは欠かさなかったという。ワープロが無いときは思いついたことをメモに書き留めたりしていた。そして、書いたものがたまるとメールで父親に送り、赤ペンを入れたものを返してもらっていた。

最後に彼女は不登校に関してこう答えている。

「自分のことを考えると学校に行かなくてよかったなあと思います。学校向きの子供と不向きな子供がいて、不向きな子供にとっては学校に行かない方が本人のためになる場合も多いと思う。子供が学校に行かないだけで親や教師が騒ぐのはバカバカしい気がします。ただ私は恵まれていたと思うんです。母親はともかく、父親は学校に行かない私のことを認めてくれていたし、私がこれまで付き合った人達は私よりも年上の人が多くて、すごく大きな目で私のことを見てくれていました・・・・」

もっとも、小説家になりたいと話したのは当時の彼氏であり、彼氏に応募を勧められたあたりや、自分の感情や気持ちを込めて書いているところを父親にはダルイと扱われるところがあるなど、現段階では父親がどのようなことを考えて娘に小説を与えたのかは分からない。

この教育は彼女の父が大学教授というそれなりに特別な人だからこそできたという人もいるだろう。このあたり、さかなクンを育てることができたのは父親が囲碁棋士という特別な人だからこそという見方と重なる。

ただ、それは絶対条件ではない。あくまで特別な職につく親には英才教育の動機を持ちやすく実行に移しやすいということで、一般の親にできないことはない。たしかに、小説という父親と同じジャンルの才能を授かったことも彼女は恵まれていたが、一般の親でも不登校児の才能を伸ばしてあげたいという強い意志があれば、例えば小説に特化した者(文学部の大学生など)を家庭教師として受け入れることは技術的には決して難しいことではない。ただ、自分でできないことを認め、それが可能な他者に委託することはなかなか難しいことだ。自分の実力の無さを認めなければならないからだ。

アスペルガー問題に巻き込まれる親の大半は自分の実力をごまかして生きてきたのだろう。日本では、今までそれが美徳だからしょうがないかもしれないが、それがまかり通る社会はもう永久に戻ってこない。

今後、彼女には、できればアスペルガー問題を題材にした小説を書いてもらいたいものだが、父親と共に開花させた天賦の才を活かしてこれからも末永く活躍してもらいたい。

参考資料 文藝春秋2004/3月号P320 受賞者インタビュー「不登校とパチスロの日々に父は」

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受賞から7年。金原ひとみが二児の母になって書いた小説。巷の評価は高いようだが金原の子供のころの影響がどう反映されているかも注目で今後も研究していきたい。
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.28 2010  金原ひとみ・小説家 comment0 trackback0
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プロフィール

藤家孟志(ふじいえたけし)

Author:藤家孟志(ふじいえたけし)
アスペルガー問題を研究している一般の男です。

この研究を基に、アスペルガーの世界に迷い込んでしまった人を一人でも多く普通の世界に連れ戻すことができたら幸いです。

何かありましたら  fuzietake@gmail.com  までよろしくです。

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